6.2.2
補題6.2.2.
行列 \(A = [a_{ij}] \in M_n\) と複素数 \(\lambda \in \mathbb{C}\) を考える。
(a) \(\lambda\) が任意のゲルシュゴリン円盤の内部に含まれないことは、次の不等式がすべての \(i = 1, \ldots, n\) に対して成り立つことと同値である。
\lvert \lambda - a_{ii} \rvert \ge R_i, \quad \text{ただし} \quad R_i = \sum_{j \ne i} \lvert a_{ij} \rvert \quad (i = 1, \ldots, n)
(b) \(\lambda\) が式 (6.1.2) におけるゲルシュゴリン集合 \(G(A)\) の境界上にあるならば、\(\lambda\) は不等式 (6.2.2a) を満たす。
(c) 行列 \(A\) が対角優位であることは、\(\lambda = 0\) が不等式 (6.2.2a) を満たすことと同値である。
演習. 上の補題を証明せよ。
演習. 点 \(\lambda = 0\) と次の行列を考えよ。
A = \begin{bmatrix} 1 & 1 \\ 1 & i \end{bmatrix} \oplus \begin{bmatrix} -1 & 1 \\ 1 & -i \end{bmatrix}
なぜ \(G(A)\) の内部にある点が不等式 (6.2.2a) を満たしうるのかを説明せよ。
補題 (6.1.1) の証明を注意深く解析すると、行列 \(A\) の固有値が不等式 (6.2.2a) を満たす場合、特にその固有値が \(G(A)\) の境界上にある場合に何が起こるのかが明らかになる。
行列解析の総本山

[行列解析]総本山
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