5.7.20
定理 5.7.20. \(M_n\) 上のノルム \(G(\cdot)\) はスペクトル優越であることと、各 \(A \in M_n\) に対して、正の定数 \(\gamma_A\)(A と G(\(\cdot\)) のみに依存)が存在し、すべての \(k = 1, 2, \dots\) に対して
G(A^k) \leq \gamma_A \, G(A)^k
が成り立つことは同値である(5.7.20a)。
証明
必要性のみを示せばよい。まず \(A \in M_n\) で \(G(A) = 1 \geq \rho(A)\) と仮定する。前の補題により、A の各ジョルダンブロックは
J_m(\lambda)
の形をもち、ここで \(|\lambda| \leq 1\)、\(|\lambda| = 1\) の場合は m = 1 となる。したがって、
1. \(|\lambda| \lt 1\) の場合、\(J_m(\lambda)^k \to 0\) (参照:5.6.12)、
2. \(|\lambda| = 1\) かつ m = 1 の場合、\(J_m(\lambda)^k = \lambda^k\) は k = 1, 2, ... に対して有界列となる。
したがって、すべての行列 \(A, A^2, A^3, \dots\) の成分は有界集合内に存在することが従い、必要条件が示される。
行列解析の総本山

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行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。
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