5.7.
定理 5.7.14. \(G(\cdot)\) を \(M_n\) 上のノルムとし、\(\|\cdot\|\) を \(\mathbb{C}^n\) 上のノルムとする。もし \(G(\cdot)\) が \(\|\cdot\|\) と両立しているならば、次が成り立つ:
G(A_1)\cdots G(A_k) \geq \rho(A_1\cdots A_k), \quad \forall A_1,\ldots,A_k \in M_n, \; k=1,2,\ldots \tag{5.7.15}
特に、\(G(A)\) はスペクトル優越的である。
証明. まず \(k=2\) の場合を考える。非零ベクトル \(x \in \mathbb{C}^n\) をとり、\(A_1A_2x = \lambda x\) かつ \(|\lambda| = \rho(A_1A_2)\) となるとする。このとき:
\rho(A_1A_2)\|x\| = \|\lambda x\| = \|A_1A_2x\| = \|A_1(A_2x)\| \leq G(A_1)\|A_2x\| \leq G(A_1)G(A_2)\|x\|
\(\|x\| \neq 0\) なので、\(\rho(A_1A_2) \leq G(A_1)G(A_2)\) が従う。一般の場合は帰納法で得られる。
演習. 上の定理において、\(k=1\) および \(k=3\) の場合を確認せよ。
どのような \(M_n\) 上のベクトルノルムが、ある \(\mathbb{C}^n\) 上のノルムと両立するだろうか?条件 (5.7.15) は必要条件である。これが十分条件であることを示すには、技術的補題が必要となる。
行列解析の総本山

[行列解析]総本山
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。
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