[行列解析4.4.26]補題

4.4.26

補題 4.4.26.

\( X \in M_{n,k} \) で \( k \leq n \) とする。このとき、次が成り立つ。

\( X^T X \) が非特異であるのは、\( X = YB \) と表せる場合に限る。ここで \( Y \in M_{n,k} \)、\( Y^T Y = I_k \)、そして \( B \in M_k \) は非特異である。

証明.

もし \( X = YB \) で \( Y^T Y = I_k \) ならば、

X^T X = B^T Y^T Y B = B^T B

となり、これは \( B \) が非特異である場合に限って非特異である。

逆に、式 (4.4.4c) を用いて

X^T X = U \Sigma U^T

と分解できる。ここで \( U \in M_k \) はユニタリ行列であり、

U^* X^T X \overline{U} = (X \overline{U})^T (X \overline{U}) = \Sigma = \mathrm{diag}(\sigma_1, \ldots, \sigma_k)

であり、\(\Sigma\) は非負の対角行列である。もし \( X^T X \) が非特異なら、\(\Sigma\) も非特異である。

ここで

R = \mathrm{diag}(\sigma_1^{1/2}, \ldots, \sigma_k^{1/2})

とおくと、

R^{-1}(X \overline{U})^T (X \overline{U})R^{-1} 
= (X \overline{U} R^{-1})^T (X \overline{U} R^{-1}) 
= R^{-1} \Sigma R^{-1} = I_k

が成り立つ。したがって、\( Y = X \overline{U} R^{-1} \)、\( B = R U^T \) とすれば、\( Y^T Y = I_k \)、\( X = YB \)、かつ \( B \) は非特異である。

例.

\( X \in M_{n,k} \)、かつ \( k \lt n \) のとき、なぜ \( \mathrm{rank}\,X = k \) なら \( X^T X \) が非特異となるのかを説明せよ。ただし、たとえ \(\mathrm{rank}\,X = k\) でも \( X^T X \) は特異となり得る。ヒント: \( X = [1 \; i]^T \) を考えよ。

例.

対称行列 \( A \in M_n \) の固有値を \(\lambda\) とする。なぜ、ベクトル \( x \) が \( A \) の右固有ベクトルであるのは、共役ベクトル \(\overline{x}\) が \( A \) の左固有ベクトルである場合に限るのかを説明せよ。

もし \( A \in M_n \) が対称行列であり、ある対角行列 \(\Lambda \in M_n\) と非特異行列 \( S \in M_n \) によって

A = S \Lambda S^{-1}

と表せるなら、\(\Lambda\) は対称である。しかし、この分解から直接 \( A \) が対称であることは明らかではない。しかし、もし \( S \) が複素直交行列ならば、\( S^{-1} = S^T \) が成り立ち、

A = S \Lambda S^{-1} = S \Lambda S^T

が成立し、この場合 \( A \) が対称であることは自明である。


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