[行列解析4.1.P1]主小行列とエルミート性の保存

4.エルミート行列、対称行列、合同行列

4.1.P1

4.1.問題1

エルミート行列の主小行列はすべてエルミートであることを示せ。歪エルミート行列や正規行列でも同様か? 証明するか反例を示せ。

ヒント

主小行列は、行列の同じ添字集合に対応する行と列を取り出したものである。エルミート性 \( A = A^* \) は成分ごとに保存されるため、部分行列にも同様の関係が成り立つかを確認すればよい。歪エルミートや正規行列についても同様に、定義を部分行列に制限して成り立つかを調べる。

解答例

まず、\( A \in M_n \) をエルミート行列とする。すなわち、 \( A = A^* \) が成り立つ。任意の添字集合 \( \alpha \subset \{1,\dots,n\} \) に対して、主小行列 \( A[\alpha] \) を考える。

このとき、\( A[\alpha] \) の共役転置は、元の行列の対応する部分を取ることで

(A[\alpha])^* = (A^*)[\alpha]

となる。ところが \( A = A^* \) より、

(A[\alpha])^* = A[\alpha]

が従う。したがって、主小行列 \( A[\alpha] \) もエルミートである。

次に歪エルミート行列の場合を考える。\( A^* = -A \) を満たすとき、同様に

(A[\alpha])^* = (A^*)[\alpha] = (-A)[\alpha] = -A[\alpha]

となるので、主小行列も歪エルミートである。

最後に正規行列の場合を考える。正規性は \( A^*A = AA^* \) で定義される。しかし一般には、主小行列について

(A[\alpha])^* A[\alpha] = A[\alpha] (A[\alpha])^*

が成り立つとは限らない。実際、正規行列の主小行列が正規でない例が存在するため、正規性は一般には保存されない。

例えば次の \( 3 \times 3 \) 行列を考える:

A =
\begin{bmatrix}
0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 1 \\
1 & 0 & 0
\end{bmatrix}

これは巡回置換行列であり、ユニタリ行列なので特に正規行列である(\( A^*A = AA^* = I \))。

ここで、先頭 \( 2 \times 2 \) 主小行列を取ると

A[{1,2}] =
\begin{bmatrix}
0 & 1 \\
0 & 0
\end{bmatrix}

となる。この行列について

A[{1,2}]^* =
\begin{bmatrix}
0 & 0 \\
1 & 0
\end{bmatrix}

であるから、

A[{1,2}]^* A[{1,2}] =
\begin{bmatrix}
0 & 0 \\
0 & 1
\end{bmatrix}, \quad
A[{1,2}] A[{1,2}]^* =
\begin{bmatrix}
1 & 0 \\
0 & 0
\end{bmatrix}

となり、両者は一致しない。

したがって、この主小行列は正規ではない。よって、正規行列の主小行列が正規とは限らないことがわかる。

以上より、エルミート行列および歪エルミート行列では主小行列も同じ性質を持つが、正規行列では一般には成り立たない。

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