0.8.3 クラメルの公式(Cramer’s Rule)
クラメルの公式は、\( A \in M_n(F) \) が正則であるとき、連立一次方程式 \( Ax = b \) の解ベクトルの特定の成分を解析的に表現する便利な方法です。
次の恒等式は (0.8.2.9) から従います:
\left( \det(A \leftarrow_i b) \right)_{i=1}^n = A\, (\mathrm{adj}\, A)\, b = (\det A)\, b
このとき、\( \det A \ne 0 \) であれば、クラメルの公式により、解ベクトル \( x \) の第 \( i \) 成分 \( x_i \) は次のように表されます:
x_i = \frac{\det(A \leftarrow_i b)}{\det A}
クラメルの公式はまた、行列式の乗法性からも直接導くことができます。すなわち、連立方程式 \( Ax = b \) を次のように書き換えます:
A (I \leftarrow_i x) = A \leftarrow_i b
この両辺の行列式を取ると(行列式の乗法性を用いて)次のようになります:
(\det A)\, \det(I \leftarrow_i x) = \det(A \leftarrow_i b)
ここで、\( \det(I \leftarrow_i x) = x_i \) なので、クラメルの公式が導かれます。
行列解析の総本山

[行列解析]総本山
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。
コメント