目次
8.6 一般的な極限定理
非負行列 \( A \) が既約であっても、正規化されたべき乗 \( A^m \) が極限を持たない場合がある。たとえば、次の行列
A =
\begin{bmatrix}
0 & 1 \\
1 & 0
\end{bmatrix}
はその典型的な例である。しかしながら、「平均的な意味」でみると、この極限は存在することが知られている。
演習 1
\( \theta \in (0, 2\pi) \) とする。このとき次を示せ:
(1 - e^{i\theta}) \sum_{m=1}^{N} e^{im\theta} = e^{i\theta} - e^{i(N+1)\theta}
これより次が従うことを示せ:
\frac{1}{N} \sum_{m=1}^{N} e^{im\theta}
= \frac{e^{i\theta} - e^{i(N+1)\theta}}{N(1 - e^{i\theta})}
\to 0
\quad \text{as } N \to \infty
演習 2
\( B \in M_n \) であり、\( \rho(B) \lt 1 \)(すなわちスペクトル半径が1未満)と仮定する。このとき次を示せ:
(I - B) \sum_{m=1}^{N} B^m = B - B^{N+1}
これより次が成り立つことを導け:
\frac{1}{N} \sum_{m=1}^{N} B^m
= \frac{1}{N} (B - B^{N+1})(I - B)^{-1}
\to 0
\quad \text{as } N \to \infty
行列解析の総本山

[行列解析]総本山
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。


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