[行列解析8.5.1]定理:原始行列に対するペロンの定理の一般化

8.5.1 原始行列に対するペロンの定理の一般化

定理 8.5.1

もし \( A \in M_n \) が非負かつ原始行列であり、\( x \) および \( y \) がそれぞれ \( A \) の右ペロンベクトルおよび左ペロンベクトルであるならば、 次の極限が成り立つ。

\lim_{m \to \infty} (\rho(A)^{-1}A)^m = xy^T

この行列 \( xy^T \) は正の成分をもつ階数1の行列である。

証明

(8.2.7) の証明に必要な要素はすべて揃っている。すなわち、\( \rho(A) \) は単純固有値であり、対応する右および左固有ベクトル \( x \)、\( y \) はともに正で、さらに \( x^T y = 1 \) が成り立つ。

(8.2.7a) における因数分解を行うことができ、このとき \( B \) のすべての固有値の絶対値は \( \rho(A) \) より厳密に小さい。 したがって次が成り立つ。

\lim_{m \to \infty} (\rho(A)^{-1}B)^m = 0

これにより、ペロンの定理を「正行列」の範囲から「原始な非負行列」の範囲へと一般化できた。

しかし実際の応用において、既約な非負行列が原始であるかどうかを、最大絶対値固有値を計算せずに判定するにはどうすればよいだろうか。 次に示す原始性の特徴付けは、計算的に直接的な方法ではないものの、いくつかの有用な判定基準を導くものである。


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