[行列解析8.4.3]補題:非負行列とその最大固有値の一意性

8.4.3 補題:非負行列とその最大固有値の一意性

補題 8.4.3 

もし \( A \in M_n \) が非負行列であり、ある整数 \( m \ge 1 \) に対して \( A^m \) が正であるならば、\( \rho(A) \) は \( A \) の唯一の最大絶対値をもつ固有値である。

この値は正であり、代数的に単純である。

証明

\( A \) の固有値を \( \lambda_1, \ldots, \lambda_n \) とする。このとき、\( A^m \) の固有値は \( \lambda_1^m, \ldots, \lambda_n^m \) である。

定理 8.2.8 により、これらのうち正の値 \( \rho(A^m) = \rho(A)^m \) に等しいものはただ一つであり、残りの固有値の絶対値はすべて \( \rho(A^m) \) よりも厳密に小さい。

したがって、\( \lambda_1, \ldots, \lambda_n \) のうち \( n - 1 \) 個は絶対値が \( \rho(A) \) より小さく、式 (8.3.1) により、残りの固有値が \( \rho(A) \) であることが保証される。

次に、ペロンの定理が非負かつ既約な行列に対してどの程度一般化されるかを考察する。正の行列に関するペロンの結果を非負行列に拡張した功績は、フロベニウス(Frobenius)の名に関連づけられている。


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