8.2.6 系:ペロンベクトルとペロン根
\( A \in M_n \) が正であるとする。このとき、次の条件を満たす唯一のベクトル \( x = [x_i] \in \mathbb{C}^n \) が存在する:
A x = \rho(A) x, \quad \sum_i x_i = 1
このようなベクトル \( x \) は正でなければならない。
(演習)式 (8.2.6) を証明せよ。
(8.2.6) により特徴づけられるこの正規化された固有ベクトルは、行列 \( A \) のペロンベクトル(Perron vector)と呼ばれる。右側からの固有ベクトルであるため、右ペロンベクトル(right Perron vector)とも呼ばれる。また、対応する固有値 \( \rho(A) \) はペロン根(Perron root)と呼ばれる。
もちろん、もし \( A \) が正なら、その転置行列 \( A^T \) も正である。したがって、これまでに示した \( A \) の固有ベクトルに関するすべての結果は \( A^T \) にも適用できる。
\( A^T \) の固有値 \( \rho(A) \) に対応する固有ベクトル \( y = [y_i] \) で、次の条件で正規化されたものを考える:
\sum_i x_i y_i = 1
このようなベクトル \( y \) も正であり、唯一である。このベクトルは \( A \) の左ペロンベクトル(left Perron vector)と呼ばれる。
(演習)もし \( A \in M_n \) が正であるならば、任意の非零ベクトル \( y \) であって \( y^T A = \rho(A) y^T \) を満たすものは、上記の条件に従って正規化できること、そしてこの正規化後に \( y \) が正かつ唯一であることを、注意深く説明せよ。
最後に、正行列のスペクトル半径に関する結果として、スペクトル半径 \( \rho(A) \) の代数的重複度も 1 であることが示される。したがって、正行列の累乗には非常に特別な漸近的性質がある。
行列解析の総本山



コメント