8.2.1 補題:正の行列に関する基本的性質
\( A \in M_n \) を正の行列とする。もし \( \lambda, x \) が \( A \) の固有値・固有ベクトルの組(固有ペア)であり、かつ \( |\lambda| = \rho(A) \) が成り立つならば、次が成立する:
|x| \gt 0 \quad \text{かつ} \quad A|x| = \rho(A)|x|.
(証明)仮定より、式 (8.1.14) から \( z = A|x| \gt 0 \) である。ここで次を得る:
z = A|x| \ge |Ax| = |\lambda x| = |\lambda||x| = \rho(A)|x|.
したがって \( y = z - \rho(A)|x| \ge 0 \) である。もし \( y = 0 \) ならば、
\rho(A)|x| = A|x| \gt 0,
ゆえに \( \rho(A) \gt 0 \) かつ \( |x| \gt 0 \) が成り立つ。
一方、もし \( y \ne 0 \) の場合、再び (8.1.14) より次が得られる:
0 \lt Ay = Az - \rho(A)A|x| = Az - \rho(A)z,
したがって \( Az \gt \rho(A)z \) となる。このとき式 (8.1.29) から
\rho(A) \gt \rho(A)
が導かれるが、これは矛盾である。したがって \( y = 0 \) でなければならない。
この技術的な結果から、正の行列に関する基本的な性質を導くことができる。
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