[行列解析7.7.7]定理:エルミート行列の半正定値条件の同値性

7.7.7 定理:エルミート行列の半正定値条件の同値性

次の定理は、ブロック構造をもつエルミート行列が正定値であるためのいくつかの同値条件を与えるものである。

定理7.7.7.

次を仮定する。エルミート行列

H = 
\begin{bmatrix}
A & B \\
B^{*} & C
\end{bmatrix}
\in M_{p+q},

ただし \( A \in M_p \)、\( C \in M_q \) とする。このとき、次の条件はすべて同値である。

(a) \( H \) は正定値である。

(b) \( A \) は正定値であり、かつ \( C - B^{*}A^{-1}B \) が正定値である。

(c) \( A \) および \( C \) は正定値であり、さらに \( \rho(B^{*}A^{-1}BC^{-1}) \lt 1 \) が成り立つ。

(d) \( A \) および \( C \) は正定値であり、最大特異値について \( \sigma_{1}(A^{-1/2}BC^{-1/2}) \lt 1 \) が成り立つ。

(e) \( A \) および \( C \) は正定値であり、ある厳密縮小(strict contraction)行列 \( X \in M_{p,q} \) が存在して

B = A^{1/2}XC^{1/2}

が成り立つ。

証明

(a) ⇔ (b):これは前節(式(7.7.5))で示した。

(b) ⇒ (c):これは(7.7.3(a))より従う。

(c) ⇔ (d):\( X = A^{-1/2}BC^{-1/2} \) とおくと、

1 \gt \rho(B^{*}A^{-1}BC^{-1})
= \rho(C^{-1/2}B^{*}A^{-1}BC^{-1/2})
= \rho(X^{*}X)
= \sigma_{1}(X)^{2}.

したがって、\( \sigma_{1}(X) \lt 1 \) が成り立つ。

(d) ⇒ (e):\( X = A^{-1/2}BC^{-1/2} \) とすれば、\( \sigma_{1}(X) \lt 1 \) かつ \( B = A^{1/2}XC^{1/2} \) である。

(e) ⇒ (a):\( B = A^{1/2}XC^{1/2} \) かつ \( X \in M_{p,q} \)、\( \sigma_{1}(X) \lt 1 \) とする。ここで

S = A^{1/2} \oplus C^{1/2}

とおくと、先行補題により

\begin{bmatrix}
I_p & X \\
X^{*} & I_q
\end{bmatrix}
\succ 0

が成り立つ。したがって、

H = S^{*}
\begin{bmatrix}
I_p & X \\
X^{*} & I_q
\end{bmatrix}
S \succ 0.

ゆえに、\( H \) は正定値である。

次に、以下の補題を用いることで、この定理を半正定値の場合に拡張することができる。


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