補足事項および参考文献
1934年、C. Loewner(K. Löwner)は、自身の名にちなんだ順序に関して単調である行列関数を特徴付けた:
すなわち、A \succeq B ならば f(A) \succeq f(B) となる場合である。
彼は、関数 f が単調な行列関数であることと、その差商カーネル
L_f(s, t) = \frac{f(s) - f(t)}{s - t}
が半正定値であることが同値であることを発見した。
たとえば、式 (7.7.4) は f(t) = −t^{-1} および f(t) = t^{1/2} が正定値行列上で単調であることを示しており、一方で (7.7.4) の後の演習は、実数値単調関数 f(t) = t^2 が正定値行列上で単調ではないことを示している。
以下の表は、関数、差商カーネル、および対応する行列(各 ξ_i ∈ (0,∞))を示しており、Loewner の理論を具体化している:
f(t) = -t^{-1}, \quad L_f = \frac{1}{s t} \quad [\xi_i \xi_j]_{i,j=1}^{n} \succeq0
f(t) = \sqrt{t}, \quad L_f = \frac{1}{\sqrt{s} + \sqrt{t}} 
\quad [(\xi_i + \xi_j)^{-1}]_{i,j=1}^{n} \succeq 0
f(t) = t^2, \quad L_f = s + t 
\quad [\xi_i + \xi_j]_{i,j=1}^{n} \text{ は不定 (1.3.25)}
行列関数の凸性に関する理論も存在する:
すなわち、任意の α ∈ (0,1) に対して
\alpha f(A) + (1 - \alpha) f(B) \lt f(\alpha A + (1 - \alpha) B)
が成立する。
演習問題 (7.7.P13 および P14) は、正規行列上での f(t) = t^2 の厳密凸性、および正定値行列上での f(t) = t^{-1} の厳密凸性を研究している。
関数 f(t) = −t^{1/2} および f(t) = t^{-1/2} も正定値行列上で厳密凸であることが知られている。
単調および凸行列関数の詳細は、Horn and Johnson (1991) の第6.6節、Bhatia (1997)、Donoghue (1974) を参照せよ。
(7.7.11–13) および (7.7.P15–P18) の内容に関するさらなる情報は、C. H. FitzGerald および R. A. Horn, "On the structure of Hermitian–symmetric inequalities," J. London Math. Soc. 15 (1977) 419–430 を参照せよ。
また、(7.7.15) および (7.7.17) に関連する追加の文献は、C. R. Johnson, "Partitioned and Hadamard product matrix inequalities," J. Research NBS 83 (1978) 585–591 を参照せよ。
行列解析の総本山


 
  
  
  
  
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