[行列解析7.5.5]応用:楕円型偏微分方程式における最大・最小原理

7.5.5 楕円型偏微分方程式における最大・最小原理

\( D \subset \mathbb{R}^n \) を開かつ有界な集合とする。\( C^2(D) \) 上で定義される次の実2階線形微分作用素

(7.5.6)
Lu = \sum_{i,j=1}^{n} a_{ij}(x) \frac{\partial^2 u}{\partial x_i \partial x_j}
      + \sum_{i=1}^{n} b_i(x) \frac{\partial u}{\partial x_i} + c(x)u

が、すべての \( x \in D \) に対して行列 \( A(x) = [a_{ij}(x)] \) が正定値であるとき、\( D \) において楕円型(elliptic)であるという。

いま、\( u \in C^2(D) \) が方程式 \( Lu = 0 \) を \( D \) の中で満たすと仮定する。このとき、関数 \( u \) の局所的な最大値や最小値についてどのようなことが言えるだろうか。

もし点 \( y \in D \) が \( u \) の局所最小点であるならば、すべての \( i = 1, \ldots, n \) に対して偏導関数 \( \frac{\partial u}{\partial x_i} = 0 \) が成り立ち、ヘッセ行列 \([ \frac{\partial^2 u}{\partial x_i \partial x_j} ]\) は \( y \) において半正定値である。

したがって、次が成り立つ:

Lu = 0 = \sum_{i,j=1}^{n} a_{ij} \frac{\partial^2 u}{\partial x_i \partial x_j} + c u

上の定理より、点 \( y \) において次が成立する:

- c u = \sum_{i,j=1}^{n} a_{ij} \frac{\partial^2 u}{\partial x_i \partial x_j} \ge 0

特に、もし \( c(y) \lt 0 \) であれば、\( u(y) \gt 0 \) となる。同様の議論により、もし \( c(y) \lt 0 \) であれば、\( D \) 内の相対的な最大点 \( y \) において \( u(y) \lt 0 \) であることがわかる。

これらの単純な観察は、次に述べる重要な最大・最小原理の核心部分となっている。


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