7.4.11 絶対ユニタリ不変ノルム
行列 \( A = [a_{ij}] \in M_{m,n} \) のフロベニウスノルムは、次の2つの形で表すことができる。
\lVert A \rVert_2 = (\sigma_1(A)^2 + \cdots + \sigma_n(A)^2)^{1/2}
または、
\lVert A \rVert_2 = \left( \sum_{i,j} |a_{ij}|^2 \right)^{1/2}
したがって、フロベニウスノルムはユニタリ不変であり、かつ絶対ノルムでもある。 では、他に「絶対ユニタリ不変ノルム」は存在するだろうか? 次の演習はその答えに向けた第一歩である。
演習
\( \alpha \ge \beta \gt 0 \) を与えられた実数とする。次のように定義する:
a = \tfrac{1}{2}(\alpha^2 + \beta^2 + \alpha - \beta), \quad
b = \tfrac{\sqrt{\alpha \beta}}{2}, \quad
c = \tfrac{1}{2}(\alpha^2 + \beta^2 - \alpha + \beta)
次に、次の実対称行列を考える:
B_{\pm} =
\begin{bmatrix}
a & b \\
b & \pm c
\end{bmatrix}
次のことを示せ:
(1) \( a, b, c \gt 0 \) (2) \( B_+ \) の固有値は \( \alpha^2 + \beta^2 \) と \( 0 \) である。 (3) \( B_- \) の固有値は \( \alpha \) および \( -\beta \) である。
したがって、\( B_+ \) の特異値は \( \alpha^2 + \beta^2 \) と \( 0 \) であり、 \( B_- \) の特異値は \( \alpha \) と \( \beta \) であることが分かる。
(ヒント:式 (1.2.4b) を参照。特に \( a + c = \alpha^2 + \beta^2 \)、および \( a - c = \alpha - \beta \) である。)
行列解析の総本山

[行列解析]総本山
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。


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