7.0.4 非負関数の三角モーメント
\( f \) を区間 \([0, 2\pi]\) 上の実数値・絶対可積分関数とし、次の値を考える。
a_k = \frac{1}{2\pi} \int_{0}^{2\pi} e^{ik\theta} f(\theta)\, d\theta, \quad k = 0, \pm1, \pm2, \ldots
数列 \( a_0, a_1, a_{-1}, a_2, a_{-2}, \ldots \) はテプリッツ(Toeplitz)モーメント列と呼ばれ、次の二次形式に自然に対応する。
\sum_{j,k=0}^{n} a_{j-k} z_j \overline{z_k} = \sum_{j,k=0}^{n} \frac{1}{2\pi} \int_{0}^{2\pi} e^{i(j-k)\theta} z_j \overline{z_k} f(\theta)\, d\theta = \frac{1}{2\pi} \int_{0}^{2\pi} \left| \sum_{k=0}^{n} z_k e^{ik\theta} \right|^2 f(\theta)\, d\theta
行列 \( A = [a_{i-j}] \) はエルミート行列である。もし関数 \( f \) が非負であるならば、任意の \( z \in \mathbb{C}^{n+1} \) および各 \( n = 0, 1, 2, \ldots \) に対して、次が成り立つ。
z^{*} A z \ge 0
行列 \( A \) のように、要素 \( a_{ij} \) が差 \( i - j \) のみに依存する構造をもつ行列をテプリッツ行列(Toeplitz matrix)と呼ぶ。このとき、その二次形式が非負であるかどうかは問わない(詳細は (0.9.7) を参照)。
ボフナー(Bochner)の定理によれば、上式の二次形式が非負であることは、数列 \( a_k \) が式 (7.0.4.1) のわずかに修正された形(非負の測度 \( d\mu \) が \( f(\theta)\, d\theta \) の代わりに用いられる)によって生成されるための必要十分条件である。
行列解析の総本山

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行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。
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