[行列解析7.0.3]非負関数の代数モーメント

7.0.3

区間 \([0, 1]\) 上で絶対可積分な実数値関数 \( f \) を考える。このとき、次の数列を定義する。

a_k = \int_{0}^{1} x^{k} f(x) \, dx

数列 \( a_0, a_1, a_2, \ldots \) は ハウスドルフ・モーメント列(Hausdorff moment sequence) と呼ばれ、自然に次の実二次形式と関連している。

\sum_{j,k=0}^{n} a_{j+k} z_j z_k 
= \sum_{j,k=0}^{n} \int_{0}^{1} x^{j+k} z_j z_k f(x) \, dx
= \int_{0}^{1} \left( \sum_{k=0}^{n} z_k x^{k} \right)^{2} f(x) \, dx

行列 \( A = [a_{i+j}] \) は実対称行列である。もし関数 \( f(x) \) が非負(すなわち \( f(x) \ge 0 \))であるならば、任意のベクトル \( z \in \mathbb{R}^{n+1} \) と各 \( n = 0, 1, 2, \ldots \) に対して、

z^{T} A z \ge 0

が成り立つ。したがって、この行列 \( A \) は半正定値である。なお、行列 \( A \) のように、要素 \( a_{ij} \) が添字の和 \( i + j \) のみに依存する構造をもつ行列を ハンケル行列(Hankel matrix) と呼ぶ。

ただし、この呼称は対応する二次形式が非負であるかどうかに関係なく用いられる(詳細は式 (0.9.8) を参照)。


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