6.2.23
定理6.2.23.行列 \(A \in M_n\) に対して、以下は同値である。
(a) \(A\) は不可約である。
(b) \((I + |A|)^{n-1} > 0\)。
(c) \((I + M(A))^{n-1} > 0\)。
証明.(a) と (b) の同値を示すためには、\(A\) が可約であることと \((I + |A|)^{n-1}\) にゼロ成分が存在することが同値であることを証明すれば十分である。
まず \(A\) が可約であり、ある置換行列 \(P\) が存在して
P^T A P = \begin{pmatrix} B & C \\ 0 & D \end{pmatrix} = \tilde{A}, \quad B \in M_r, \, D \in M_{n-r}, \, 1 \le r \le n-1
が成立するとする。置換相似の効果は行と列を入れ替えることのみであるため、\(P^T |A| P = |P^T A P| = |\tilde{A}|\) である。また、各行列 \(|\tilde{A}|^2, |\tilde{A}|^3, \dots, |\tilde{A}|^{n-1}\) は左下に \((n-r)\)-行×r列 のゼロブロックを持つ。したがって
P^T (I + |A|)^{n-1} P = (I + P^T |A| P)^{n-1} = (I + |\tilde{A}|)^{n-1} = I + (n-1)|\tilde{A}| + \binom{n-1}{2} |\tilde{A}|^2 + \cdots + |\tilde{A}|^{n-1}
各項は左下に \((n-r)\)-行×r列 のゼロブロックを持つため、\((I + |A|)^{n-1}\) も可約であり、ゼロ成分を持つ。
逆に、あるインデックス \(p \neq q\) に対して \((I + |A|)^{n-1}\) の (p,q) 成分が 0 であるとする。このとき、\(\mathcal{G}(A)\) において \(P_p\) から \(P_q\) への有向パスは存在しない。ノード集合
S_1 = \{ P_i : P_i = P_q \text{ または } P_i \text{ から } P_q \text{ へのパスが存在する} \}
および \(S_1\) に含まれないノード全体を \(S_2\) とする。すると \(S_1 \cup S_2 = \{P_1, \dots, P_n\}\) であり、\(P_q \in S_1 \neq \emptyset\) であるので、\(S_2 \neq \emptyset\)。もし \(S_2\) のあるノード \(P_i\) から \(S_1\) のあるノード \(P_j\) へのパスが存在すれば、定義により \(P_i\) は \(S_1\) に含まれることになる。したがって、\(S_2\) のいかなるノードからも \(S_1\) のいかなるノードへのパスは存在しない。
ノードのラベルを入れ替え、\(S_1 = \{\tilde{P}_1, \dots, \tilde{P}_r\}\)、\(S_2 = \{\tilde{P}_{r+1}, \dots, \tilde{P}_n\}\) とする。ラベル入れ替えに対応する置換行列を \(P\) とすれば、
\tilde{A} = P^T A P = \begin{pmatrix} B & C \\ 0 & D \end{pmatrix}, \quad B \in M_r, \, D \in M_{n-r}
したがって \(A\) は可約である。 (a) と (c) の場合も同様の議論で示される。
行列解析の総本山

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