[行列解析5.6.3]定義:誘導された行列ノルムとその性質

5.6.3

(5.6.1)
\|\!|A\|\!| = \max_{\|x\|=1} \|Ax\|

定義 5.6.3.

(5.6.1) で定義された関数 \(\|\!|\cdot\|\!|\) を、ノルム \(\|\cdot\|\) から誘導された行列ノルムという。これは、ベクトルノルム \(\|\cdot\|\) に対応する作用素ノルム(operator norm)または上限ノルム(lub norm: least upper bound norm)とも呼ばれる。

(5.6.2(b)) における不等式は、ベクトルノルム \(\|\cdot\|\) が行列ノルム \(\|\!|\cdot\|\!|\) と両立している(compatible)ことを示している。定理 5.6.2 によれば、\(\mathbb{C}^n\) 上の任意のノルムに対して、それと両立する \(M_n\) 上の行列ノルムが存在する。

行列に対して \(\|\!|I\|\!| = 1\) が成り立つようなノルムを「ユニタル(unital)」という。先の定理は、すべての誘導された行列ノルムがユニタルであることを述べている。なお、行列に対する \(\ell_\infty\) ノルムはユニタルであるが、行列ノルムではない。(5.6.33.1) は、誘導されていないユニタルな行列ノルムの例を示している。

誘導された行列ノルムは常に行列ノルムである。したがって、\(M_n\) 上の非負値関数が行列ノルムであることを示す一つの方法は、それが (5.6.1) の定義に従って、あるベクトルノルムから誘導されることを示すことである。

以下の各例において、この原理を適用し、\(A = [a_{ij}] \in M_n\) を考える。


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