[行列解析5.4.3]補題:線形結合で定義される関数の一様連続性

5.4.3

この補題では、与えられたベクトル空間内の有限個のベクトルを用いて定義される関数が、一様連続であることを示します。

補題 5.4.3. \( \| \cdot \| \) を体 \(F\) (\(F = \mathbb{R}\) または \(\mathbb{C}\))上のベクトル空間 \(V\) におけるノルムとする。正の整数 \(m \geq 1\) が与えられ、ベクトル \(x^{(1)}, x^{(2)}, \dots, x^{(m)} \in V\) が与えられているとする。任意の \(z = [z_1, \dots, z_m]^T \in F^m\) に対して

x(z) = z_1 x^{(1)} + z_2 x^{(2)} + \cdots + z_m x^{(m)}

と定義する。このとき、次のように定義される関数 \( g: F^m \to \mathbb{R} \)

g(z) = \| x(z) \| \\
= \| z_1 x^{(1)} + z_2 x^{(2)} + \cdots + z_m x^{(m)} \|

は、ユークリッドノルムに関して \(F^m\) 上で一様連続である。

証明. \(u = [u_1, \dots, u_m]^T\)、\(v = [v_1, \dots, v_m]^T\) とする。式 (5.2.1) とコーシー–シュワルツの不等式を用いると、次のように計算できる。

| g(u) - g(v) |\\
= \big| \| x(u) \| - \| x(v) \| \big| \\
\leq \| x(u) - x(v) \| \\
= \left\| \sum_{i=1}^m (u_i - v_i) x^{(i)} \right\| \\
\leq \sum_{i=1}^m |u_i - v_i| \, \| x^{(i)} \|
\leq \left( \sum_{i=1}^m |u_i - v_i|^2 \right)^{1/2}
     \left( \sum_{i=1}^m \| x^{(i)} \|^2 \right)^{1/2} \\
= C \, \| u - v \|_2

ここで、有限定数 \(C = \left( \sum_{i=1}^m \| x^{(i)} \|^2 \right)^{1/2}\) はノルム \(\| \cdot \|\) とベクトル \(x^{(1)}, \dots, x^{(m)}\) のみに依存する。

もしすべての \(x^{(i)} = 0\) であれば、任意の \(z\) に対して \(g(z) = 0\) であり、このとき \(g\) は自明に一様連続である。いくつかの \(x^{(i)} \neq 0\) が存在すれば、\(C \gt 0\) であり、任意の \(\varepsilon \gt 0\) に対して \(\| u - v \|_2 \lt \varepsilon / C\) であれば

| g(u) - g(v) | \lt \varepsilon

が成立する。したがって、\(g\) は一様連続である。■

なお、この補題においてノルム付き線形空間 \(V\) が有限次元である必要はない。しかし、次に述べる基本定理においては有限次元性が本質的である。


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