3.3 問題32
3.3.P32
\( A \in M_n \) の異なる固有値を \( \lambda_1, \ldots, \lambda_d \) とする。ジョルダン標準形におけるブロックの個数を \( N = w_1(A,\lambda_1)+\cdots+w_1(A,\lambda_d) \) とする。次の手順を繰り返すことで、すべてのブロックを消去できる(必ず有限回で終了する)。
(i) 各 \( k = 1, \ldots, d \) について、固有値 \(\lambda_k\) に対応するブロックがリストに残っていれば、その中で最大サイズのものを1つ取り除く。
(ii) 取り除かれた(高々 \( d \) 個の)ブロックの直和を \( J_j \) とし、その特性多項式を \( p_j(t) \) とする。さらに、\( C_j \) を \( p_j(t) \) の伴行列とする。
この構成について次を示しなさい。
(a) 各行列 \( J_j \) は nonderogatory である。
(b) 各 \( J_j \) は \( C_j \) に相似である。
(c) \( A \) は \( F = C_1 \oplus \cdots \oplus C_r \) に相似である。
(d) \( p_1(t) \) は \( A \) の最小多項式であり、\( p_1(t)\cdots p_r(t) \) は \( A \) の特性多項式である。
(e) \( A \) が実行列であれば \( F \) も実行列である。
(f) 各 \( j = 1,\ldots,r-1 \) について、\( p_{j+1}(t) \) は \( p_j(t) \) を割り切る。
(g) \( F' = C'_1 \oplus \cdots \oplus C'_s \) が伴行列の直和であり、もし \( F' \) が \( A \) に相似であり、かつ各 \( j = 1,\ldots,s-1 \) について \( p_{C'_{j+1}}(t) \) が \( p_{C'_j}(t) \) を割り切るならば、\( F' = F \) である。
多項式 \( p_1(t), \ldots, p_r(t) \) を \( A \) の不変因子(invariant factors)と呼ぶ。ここでは \( A \) のジョルダン標準形(したがって固有値)を使って \( F \) を構成したが、実際には固有値を明示的に用いなくても \( A \) の不変因子を計算できる。すなわち、有限回の有理的な計算(加減乗除)だけで \( A \) の不変因子を決定できる。もし \( A \) が実行列であれば、計算に現れるのは実数のみである。より一般に、もし \( A \) の成分が体 \( F \) に属すれば、その計算は \( F \) の元だけを用いて行える。この行列 \( F \) を \( A \) の有理標準形(rational canonical form)という。
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