[行列解析3.2.P2]可換行列が多項式のときの非退化性

3.標準形と三角因子分解

3.2.P2

3.2問題2

\( A \in M_n \) とする。もし \( A \) と可換なすべての行列が \( A \) の多項式であるならば、\( A \) が非退化(nonderogatory)であることを示せ。

ヒント

背理法を用いる。もし \( A \) が非退化でないならば、最小多項式の次数は \( n \) 未満になる。このとき \( A \) のジョルダン標準形には同じ固有値に対応するジョルダンブロックが少なくとも2つ存在する。

同じ固有値をもつ複数のジョルダンブロックがある場合、それらのブロックの間を入れ替えるような行列を作ることができる。この行列は \( A \) と可換であるが、\( A \) の多項式では表せない。これにより仮定に矛盾が生じる。

解答例

仮定として、\( A \) と可換なすべての行列が \( A \) の多項式であるとする。すなわち、任意の行列 \( B \in M_n \) が \( AB = BA \) を満たすならば、ある多項式 \( p(t) \) が存在して \( B = p(A) \) と書けるとする。

これに対して \( A \) が非退化でないと仮定する。すると \( A \) の最小多項式の次数は \( n \) 未満であり、ジョルダン標準形において同じ固有値に対応するジョルダンブロックが少なくとも2つ存在する。

ある可逆行列 \( S \) を用いて \( A \) をジョルダン標準形にすると

J = S^{-1} A S

となる。このとき \( J \) は同じ固有値 \( \lambda \) をもつジョルダンブロック \( J_1, J_2 \) を含むとする。

ここで、これら2つのブロックの間を入れ替えるような行列 \( C \) を考える。すなわち、ブロック構造に関して

CJ = JC

を満たすように構成する。このような行列 \( C \) は存在し、しかもジョルダンブロック間の成分をもつため、一般には \( J \) の多項式では表せない。

いま

B = S C S^{-1}

とおくと、

AB = BA

が成り立つ。したがって \( B \) は \( A \) と可換である。

しかし \( C \) は \( J \) の多項式ではないので、\( B \) も \( A \) の多項式ではない。これは「\( A \) と可換なすべての行列が \( A \) の多項式である」という仮定に矛盾する。

したがって仮定は誤りであり、\( A \) は非退化でなければならない。すなわち \( A \) は nonderogatory である。


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