3.1.P14
3.1問題14
補題(3.1.18)
二つの正方複素行列 \(A, B \in M_n\) が相似であることの必要十分条件は、
(a) 異なる固有値 \(\lambda_1, \ldots, \lambda_d\) が一致すること、および
(b) 各 \(i = 1, \ldots, d\) に対して、すべての \(k = 1, 2, \ldots\) について \(w_k(A, \lambda_i) = w_k(B, \lambda_i)\) が成り立つこと、すなわち各固有値に対応する Weyr 特性が一致することである。
\(A\in M_n\) とする。補題 (3.1.18) を用いて \(A\) と \(A^{\top}\) が相似であることを示しなさい。
さらに、\(A\) と \(A^\ast\) が相似であるかどうかを論じなさい。
ヒント
補題より、相似であることを示すには固有値と各固有値に対する Weyr 特性が一致すれば十分である。
転置をとっても特性多項式は変わらない。
さらに \((A-\lambda I)^{\mathrm T}=(A^{\top}-\lambda I)\) であることから、階数が一致することを用いる。
解答例
まず \(A\) と \(A^{\top}\) が相似であることを示す。
転置をとっても行列式は変わらないので
\det(tI-A)
=\det\bigl((tI-A)^{\top}\bigr)
=\det(tI-A^{\top})
である。したがって両者の特性多項式は一致し、固有値(重複度を含めて)も一致する。
さらに
(A-\lambda I)^k{}^{\top}
=(A^{\top}-\lambda I)^k
が成り立つ。転置は階数を保つので
\operatorname{rank}(A-\lambda I)^k
=\operatorname{rank}(A^{\top}-\lambda I)^k
である。
よって
w_k(A,\lambda)
=r_{k-1}(A,\lambda)-r_k(A,\lambda)
=w_k(A^{\top},\lambda)
となり、各固有値に対する Weyr 特性が一致する。
補題 (3.1.18) より、\(A\) と \(A^{\top}\) は相似である。
次に \(A\) と \(A^\ast\) について考える。ここで \(A^\ast=\overline{A}^{\top}\) である。
このとき
\det(tI-A^\ast)
=\overline{\det(\overline{t}I-A)}
となるので、固有値は一般に複素共役に移る。 したがって、固有値がすべて実数である場合には固有値集合が一致し、さらに同様に Weyr 特性も一致するので相似である。
しかし固有値に非実複素数が含まれる場合、固有値集合が一致しないことがあるため、一般には \(A\) と \(A^\ast\) は相似とは限らない。
以上より、\(A\) と \(A^{\top}\) は常に相似であるが、\(A\) と \(A^\ast\) は一般には相似とは限らず、固有値がすべて実数である場合に限り相似となる。
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