[行列解析0.9.12]コーシー行列

行列

0.9.12 コーシー行列

コーシー行列 \( A \in M_n(F) \) は、以下のような形式の行列です:

 A = \left[ \frac{1}{a_i + b_j} \right]_{i,j=1}^n 

ここで、\( a_1, \ldots, a_n \)、\( b_1, \ldots, b_n \) はスカラーであり、すべての \( i, j = 1, \ldots, n \) に対して \( a_i + b_j \neq 0 \) であるとします。次の事実が知られています。

 \det A = \frac{ \prod_{1 \leq i < j \leq n} (a_j - a_i)(b_j - b_i) }{ \prod_{1 \leq i, j \leq n} (a_i + b_j) } 

したがって、行列 \( A \) が正則(可逆)であるための必要十分条件は、すべての \( i \neq j \) に対して \( a_i \neq a_j \) および \( b_i \neq b_j \) が成り立つことです。

ヒルベルト行列 \( H_n = \left[ \frac{1}{i + j - 1} \right]_{i,j=1}^n \) は、コーシー行列であると同時にヘンケル行列でもあります。次の式が成り立ちます。

 \det H_n = \frac{(1! 2! \cdots (n - 1)!)^4}{1! 2! \cdots (2n - 1)!} 

したがって、ヒルベルト行列は常に正則です。その逆行列 \( H_n^{-1} = [h_{ij}]_{i,j=1}^n \) の成分は、以下のように与えられます。

 h_{ij} \\= \frac{(-1)^{i+j} (n + i - 1)! (n + j - 1)!} {((i - 1)! (j - 1)!)^2 (n - i)! (n - j)! (i + j - 1)} 

これらの性質により、ヒルベルト行列は数値計算や理論的な行列解析の研究において、非常に重要な役割を果たします。


行列解析の総本山

[行列解析]総本山
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました