[行列解析3.2.P1]非退化行列と可換行列族の多項式表示

3.標準形と三角因子分解

3.2.P1

3.2問題1

\( F = \{ A_{\alpha} : \alpha \in I \} \subset M_n \) を添字集合 \( I \) によって添字付けられた行列族とする。ある非退化(nonderogatory)な行列 \( A_0 \in F \) が存在し、すべての \( \alpha \in I \) に対して \( A_{\alpha} A_0 = A_0 A_{\alpha} \) が成り立つと仮定する。

このとき、すべての \( \alpha \in I \) に対して、次数が最大で \( n-1 \) の多項式 \( p_{\alpha}(t) \) が存在して \( A_{\alpha} = p_{\alpha}(A_0) \) が成り立つことを示せ。したがって、\( F \) は可換族である。

ヒント

非退化(nonderogatory)行列とは、最小多項式の次数が \( n \) である行列である。このとき、あるベクトル \( v \) が存在して \( v, A_0 v, A_0^2 v, \ldots, A_0^{n-1} v \) が基底をなす。これを巡回基底(cyclic basis)という。

行列 \( A_\alpha \) が \( A_0 \) と可換、すなわち \( A_\alpha A_0 = A_0 A_\alpha \) を満たすとき、この基底に対する作用を調べると \( A_\alpha \) の作用は \( v \) の像によって完全に決まることがわかる。結果として \( A_\alpha \) は \( A_0 \) の多項式として表される。

解答例

\( A_0 \in M_n \) が非退化であるとする。このとき \( A_0 \) の最小多項式の次数は \( n \) である。したがって、あるベクトル \( v \in \mathbb{C}^n \) が存在して

\{ v, A_0 v, A_0^2 v, \ldots, A_0^{n-1} v \}

が \( \mathbb{C}^n \) の基底となる。この基底を用いて議論する。

仮定より任意の \( \alpha \in I \) に対して \( A_\alpha A_0 = A_0 A_\alpha \) が成り立つ。まずベクトル \( v \) に対する作用を考える。あるスカラー \( c_0,c_1,\ldots,c_{n-1} \) が存在して

A_\alpha v
=
c_0 v + c_1 A_0 v + c_2 A_0^2 v + \cdots + c_{n-1} A_0^{n-1} v

と表せる。

ここで可換性を用いると

A_\alpha A_0^k v
=
A_0^k A_\alpha v

が成り立つ。したがって上式を用いると

A_\alpha A_0^k v
=
c_0 A_0^k v
+
c_1 A_0^{k+1} v
+
\cdots
+
c_{n-1} A_0^{k+n-1} v

となる。したがって基底 \( v, A_0 v, \ldots, A_0^{n-1} v \) に対する \( A_\alpha \) の作用は、係数 \( c_0,\ldots,c_{n-1} \) によって完全に決まる。

ここで多項式 \( p_\alpha(t) \) を

p_\alpha(t)
=
c_0 + c_1 t + c_2 t^2 + \cdots + c_{n-1} t^{\,n-1}

と定めると、

p_\alpha(A_0)v
=
A_\alpha v

が成り立つ。また可換性から同様にすべての \( A_0^k v \) に対して

p_\alpha(A_0)A_0^k v
=
A_\alpha A_0^k v

が従う。基底上で一致するので

A_\alpha = p_\alpha(A_0)

が得られる。ここで \( p_\alpha(t) \) の次数は高々 \( n-1 \) である。

最後に、任意の \( \alpha,\beta \in I \) に対して

A_\alpha = p_\alpha(A_0), \quad
A_\beta = p_\beta(A_0)

と書けるので

A_\alpha A_\beta
=
p_\alpha(A_0)p_\beta(A_0)
=
p_\beta(A_0)p_\alpha(A_0)
=
A_\beta A_\alpha

となる。したがって行列族 \( F \) は可換族である。


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