[行列解析3.1.P26]正規行列が対角化可能であることの証明

3.標準形と三角因子分解

3.1.P26

3.1問題26

\( A \in M_n \) が正規行列であるとする。

前問を用いて、定義 (2.5.1) から \( A \) が対角化可能であることを導け。ただしスペクトル定理 (2.5.3) は用いないこと。

2.5.1.定義(正規行列)

正規行列の定義

行列 \( A \in \mathbb{M}_n \) が正規であるとは、\( AA^* = A^*A \) を満たす、すなわち、\( A \) がその共役転置と可換であることを意味します。

スペクトル定理(2.5.3)

行列 \( A = [a_{ij}] \in M_n \) が固有値 \( \lambda_1, \ldots, \lambda_n \) を持つとします。以下の主張はすべて同値です:

(a) \( A \) は正規行列である。

(b) \( A \) はユニタリ対角化可能である。

(c) \( \sum_{i,j=1}^{n} |a_{ij}|^2 = \sum_{i=1}^{n} |\lambda_i|^2 \)

(d) \( A \) は互いに直交する \( n \) 個の固有ベクトルを持つ。

ヒント

前問より、行列 \(A\) が対角化可能であることは、各固有値 \( \lambda \) に対して \( (A-\lambda I)^2x=0 \Rightarrow (A-\lambda I)x=0 \) が成り立つことと同値である。

正規行列の定義は \(AA^* = A^*A\) である。これを用いると、行列 \(A-\lambda I\) も正規であることがわかる。正規行列 \(B\) に対しては \( B^*B = BB^* \) が成立するため、ベクトル \(x\) に対して \( \|Bx\|^2 = \|B^*x\|^2 \) が成り立つ。

この性質を \(B = A-\lambda I\) に適用し、\( (A-\lambda I)^2x=0 \) を仮定すると \( (A-\lambda I)x=0 \) が従うことを示せばよい。

解答例

行列 \(A \in M_n\) が正規行列であるとする。すなわち \(AA^* = A^*A\) が成り立つ。

任意の固有値 \( \lambda \) に対して

B = A - \lambda I

とおく。このとき

B^* = A^* - \overline{\lambda} I

であるから

BB^*
=
(A-\lambda I)(A^*-\overline{\lambda}I)
B^*B
=
(A^*-\overline{\lambda}I)(A-\lambda I)

ここで \(AA^*=A^*A\) を用いると

BB^* = B^*B

が成り立つ。したがって \(B\) も正規行列である。

いま \( (A-\lambda I)^2x=0 \) を満たすベクトル \(x\) をとる。すなわち

B^2x = 0

である。

このとき \(y = Bx\) とおくと

By = B(Bx) = B^2x = 0

が成り立つ。

ここで正規行列の性質より

\|By\|^2
=
\langle By,By\rangle
=
\langle B^*By,y\rangle
=
\langle BB^*y,y\rangle
=
\|B^*y\|^2

が成り立つ。

しかし \(By=0\) であるから

\|By\|^2 = 0

となり、したがって

y = 0

である。すなわち

Bx = 0

すなわち

(A-\lambda I)x = 0

が従う。

したがって任意の固有値 \( \lambda \) に対して \( (A-\lambda I)^2x=0 \Rightarrow (A-\lambda I)x=0 \) が成り立つ。

前問の結果より、この条件は \(A\) が対角化可能であることと同値である。よって正規行列 \(A\) は対角化可能である。


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