[行列解析3.1.P21]既約上ヘッセンベルグ行列の固有値構造

3.標準形と三角因子分解

3.1.P21

3.1問題21

\( A \in M_n \) が既約でない上ヘッセンベルグ行列であるとする((0.9.9) 参照)。

(a) \( A \) の各固有値 λ に対して \( w_1(A, \lambda) = 1 \) であり、したがって \( A \) は非退化(nonderogatory)である理由を説明せよ。

(b) もし \( A \) が対角化可能(たとえばエルミートかつ三重対角行列である場合)なら、\( A \) が \(n\) 個の異なる固有値を持つ理由を説明せよ。

ヒント

既約な上ヘッセンベルグ行列とは、対角の直下成分がすべて 0 でない行列である。

この形により、連立方程式 \( (A-\lambda I)x=0 \) を下から順に解くと、最初の成分以外は一意的に決まることに注目する。

固有空間の次元が 1 であることを示せばよい。

解答例

\( A \in M_n \) を既約な上ヘッセンベルグ行列とする。すなわち \( a_{i+1,i} \neq 0 \) がすべての \( i=1,\dots,n-1 \) について成り立つ。

(a) 固有値 \( \lambda \) に対し、固有ベクトルは \( (A-\lambda I)x=0 \) を満たすベクトルである。

\( A-\lambda I \) も上ヘッセンベルグ形であり、対角直下成分は依然として 0 でない。よって連立方程式は最下行から順に解くことができる。

最後の式は

a_{n,n-1}x_{n-1} + (a_{n,n}-\lambda)x_n = 0

である。ここで \( a_{n,n-1} \neq 0 \) であるから、\( x_{n-1} \) は \( x_n \) によって一意的に定まる。

同様に上へさかのぼると、各成分 \( x_{k} \) は \( x_{k+1} \) によって一意的に定まる。したがって自由に選べる成分は 1 つのみである。

ゆえに固有空間の次元は \( w_1(A,\lambda)=1 \) である。

すべての固有値について幾何学的重複度が 1 であるから、最小多項式の次数は \( n \) であり、\( A \) は非退化(nonderogatory)である。

(b) さらに \( A \) が対角化可能であると仮定する。このとき各固有値について代数的重複度と幾何学的重複度が一致する。

しかし (a) で示したように、各固有値の幾何学的重複度は 1 である。したがって各固有値の代数的重複度も 1 である。

よって固有値はすべて単純であり、\( A \) は \( n \) 個の異なる固有値をもつ。

特にエルミート三重対角行列で既約な場合には、常にこの状況が成り立つ。


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