[行列解析7.1.14]観察:半正定値行列の基本的な性質(零行列との関係)

7.1.14.半正定値行列の基本的な性質:零行列との関係

次の観察結果は、半正定値行列に関して「和が零行列となる条件」と「階数が正である条件」を示している。

観察 7.1.14. \( A, B \in M_n \) が半正定値であるとする。このとき次が成り立つ。

(a) \( A + B = 0 \) であることと、\( A = B = 0 \) であることは同値である。
(b) \(\operatorname{rank}(A + B) \gt 0\) であることと、\(A\) または \(B\) の少なくとも一方が零でないことは同値である。

証明. (a) 逆向き(\(A = B = 0 \Rightarrow A + B = 0\))は自明なので、順向きのみを示す。

\( A = [a_{ij}] \)、\( B = [b_{ij}] \) とし、\( A + B = 0 \) と仮定する。このとき、各 \( i = 1, \dots, n \) に対して、

a_{ii} + b_{ii} = 0

が成り立つ。各項 \( a_{ii} \)、\( b_{ii} \) は実数かつ非負であるから、各 \( i \) について \( a_{ii} = b_{ii} = 0 \) が従う。 (7.1.10) の第2の主張より、これにより \( A = B = 0 \) が得られる。

(b) \(\operatorname{rank}(A + B) = 0\) であることと \( A + B = 0 \) であることは同値であり、さらに (a) より \(A = B = 0\) と同値である。∎


行列解析の総本山

[行列解析]総本山
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました