[行列解析7.1.3]観察:正定値・半正定値行列の線形結合に関する性質

7.1.3 正定値・半正定値行列の線形結合に関する性質

次の観察は、半正定値行列や正定値行列を非負の実数で線形結合したとき、その性質が保持されることを示している。

観察 7.1.3

\( A_1, A_2, \ldots, A_k \in M_n \) を半正定値行列とし、\( \alpha_1, \alpha_2, \ldots, \alpha_k \) を非負の実数とする。 このとき、

\sum_{i=1}^{k} \alpha_i A_i

は半正定値である。さらに、ある \( j \in \{1, \ldots, k\} \) に対して \( \alpha_j \gt 0 \) かつ \( A_j \) が正定値であるならば、

\sum_{i=1}^{k} \alpha_i A_i

は正定値である。

証明

\( x \in \mathbf{C}^n \) を零でないベクトルとする。このとき、

x^{*} \left( \sum_{i=1}^{k} \alpha_i A_i \right) x
= \sum_{i=1}^{k} \alpha_i (x^{*} A_i x)
\ge 0

である。なぜなら、すべての \( \alpha_i \ge 0 \) かつ \( x^{*} A_i x \ge 0 \) だからである。
さらに、もしある項が正の値をとるならば、その総和も正となる。したがって、定理が成り立つ。


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