6.4.29
\( A \in M_n \) で \( n \ge 2 \) のとき、次のいずれかの条件を満たすとき、行列 \( A \) は非特異(nonsingular)である。
(a) \( A \) が弱い意味で既約(weakly irreducible)であり、任意の非自明な閉路 \( \gamma \in C(A) \) に対して次が成り立つ場合。
\prod_{P_i \in \gamma} |a_{ii}| \gt \prod_{P_i \in \gamma} R_i
(b) \( A \) が既約(irreducible)であり、任意の非自明な閉路 \( \gamma \in C(A) \) に対して次が成り立ち、少なくとも1つの閉路では不等号が厳密になる場合。
\prod_{P_i \in \gamma} |a_{ii}| \ge \prod_{P_i \in \gamma} R_i
最後の結果として、Brauerの定理の強化版を述べる。これは、式 (6.4.7) に示される場合よりも少ないカッシーニの楕円領域(oval of Cassini)の和集合内に、行列 \( A \) の固有値が存在することを示すものである。特に、行列 \( A \) がスパース(疎行列)であり、対称的に配置された多くのゼロ要素をもつ場合には、考慮すべき楕円の数を劇的に減らすことができる。
行列解析の総本山

[行列解析]総本山
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。
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