6.3.4
\( A, E \in M_n \) とし、\( A \) が正規行列であるとする。このとき、もし \( \hat{\lambda} \) が \( A + E \) の固有値であるならば、\( A \) の固有値 \( \lambda \) が存在して、次が成り立つ。
\lvert \hat{\lambda} - \lambda \rvert \leq \|E\|_2
この系において、摂動行列 \( E \) も、摂動後の行列 \( A + E \) も、必ずしも正規である必要はない。たとえば、\( A \) が実対称行列であっても、\( E \) が実行列だが対称でない場合などが考えられる。
演習: 系 (6.3.4) の証明を詳細に示せ。
演習: \( A, E \in M_n \) がともにエルミート行列であり、\( A \) の固有値が次のように昇順に並んでいるとする:
\lambda_1 \leq \cdots \leq \lambda_n
また、\( A + E \) の固有値を昇順に
\hat{\lambda}_1 \leq \cdots \leq \hat{\lambda}_n
さらに \( E \) の固有値を昇順に
\lambda_1(E) \leq \cdots \leq \lambda_n(E)
と書く。このとき、Weylの不等式 (4.3.2a, b) を用いて、次を示せ:
\lambda_1(E) \leq \hat{\lambda}_k - \lambda_k \leq \lambda_n(E), \quad k = 1, \ldots, n
したがって次が成り立つ:
|\hat{\lambda}_k - \lambda_k| \leq \rho(E) = \|E\|_2
なぜこの評価が (6.3.4) における上界よりも良いのか、また、もし \( E \) のすべての固有値が非負である場合に何が言えるかを考察せよ。
数値計算の応用では、\( A \) と摂動行列 \( E \) の両方が実対称である場合が多い。このような場合、あるいはより一般的に、\( A \) および \( A + E \) がいずれも正規行列であるとき、すべての固有値に対してフロベニウスノルムによる上界が得られる。
行列解析の総本山

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