[行列解析6.3.1]観察:対角化可能な行列に対する固有値摂動

6.3.1

\(A \in M_n\) が対角化可能であり、非特異行列 \(S\) を用いて \(A = S \Lambda S^{-1}\) と表されるとする。ここで \(\Lambda\) は対角行列である。また、\(E \in M_n\) とする。もし \(\hat{\lambda}\) が \(A + E\) の固有値であるならば、\(A\) の固有値 \(\lambda\) が存在して次が成り立つ。

|\hat{\lambda} - \lambda| \le \|S\|_{\infty} \, \|E\|_{\infty} \, \|S^{-1}\|_{\infty}
= \kappa_{\infty}(S) \, \|E\|_{\infty}

ここで、\(\kappa_{\infty}(\cdot)\) は行列ノルム \(\| \cdot \|_{\infty}\) に関する条件数である。

証明

\(A + E\) と \(S^{-1}(A + E)S = \Lambda + S^{-1}ES\) は同じ固有値を持つ。また、\(\Lambda\) は対角行列であるため、前節の議論より \(A\) の固有値 \(\lambda\) が存在して次が成り立つ。

|\hat{\lambda} - \lambda| \le \|S^{-1} E S\|_{\infty}

この不等式に行列ノルム \(\| \cdot \|_{\infty}\) の劣乗法則(submultiplicativity)を適用すると、上の主張が導かれる。

最大行和ノルム(\(\| \cdot \|_{\infty}\))は、\(\mathbb{C}^n\) 上の和ノルムにより誘導されるものであり、これは絶対ノルムである。この性質を用いて、式 (5.6.36) により上記の観察を一般化することができる。


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