[行列解析6.2.21]定義:可約行列

6.2.21

定義6.2.21.行列 \(A \in M_n\) が可約であるとは、置換行列 \(P \in M_n\) が存在して

P^T A P =
\begin{pmatrix}
B & C \\
0_{n-r,r} & D
\end{pmatrix}, \quad 1 \le r \le n-1

の形に変換できる場合をいう。ここで、ブロック \(B, C, D\) のいずれかに非ゼロ成分があることは要求しない。要求するのは、行および列の入れ替えにより、左下の \((n-r)\)-行×r列 のゼロブロックを作れることである。ただし、正方行列 \(B\) と \(D\) はそれぞれ少なくとも1次元でなければならず、したがって1×1行列は可約ではない。

演習.もし \(A \in M_n\) が可約であるならば、なぜ少なくとも \(n-1\) 個のゼロ成分を持つか説明せよ。

次に、線形方程式系 \(Ax = y\) を解く場合を考える。行列 \(A\) が可約であるとする。\(\tilde{A} = P^T A P = \begin{pmatrix} B & C \\ 0 & D \end{pmatrix}\) と書けば、

Ax = P \tilde{A} P^T x = y \quad \text{または} \quad \tilde{A} (P^T x) = P^T y

と変形できる。ここで、\(P^T x = \tilde{x} = \begin{pmatrix} z \\ \zeta \end{pmatrix}\)(未知)および \(P^T y = \tilde{y} = \begin{pmatrix} w \\ \omega \end{pmatrix}\)(既知)、ただし \(z, w \in \mathbb{C}^r\)、\(\zeta, \omega \in \mathbb{C}^{n-r}\) とする。このとき解くべき方程式系は

\tilde{A} \tilde{x} = \tilde{y} =
\begin{pmatrix}
B & C \\
0 & D
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
z \\ \zeta
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
w \\ \omega
\end{pmatrix}

すなわち、二つの方程式系 \(D \zeta = \omega\) および \(B z + C \zeta = w\) に相当する。まず \(D \zeta = \omega\) を解いて \(\zeta\) を求め、次に \(B z = w - C \zeta\) を解いて \(z\) を求めれば、元の問題を二つのより小さな問題に分割できる。可約な係数行列を持つ線形系は、二つの小さな線形系に分解可能である。


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