6.1.3系
本節では、ゲルシュゴリンの定理から導かれる系(Corollary 6.1.3)を示す。これにより、行列の固有値が複素平面上の特定の円盤(ゲルシュゴリン円)に必ず含まれることがわかる。
定理より、行列 \( A = [a_{ij}] \in M_n \) の固有値は、次の \( n \) 個の円盤の和集合に含まれる。
\bigcup_{j=1}^{n} \{ z \in \mathbb{C} : |z - a_{jj}| \leq C_j(A) \} = G(A^{T})
ここで、\( C_j(A) = \sum_{i \ne j} |a_{ij}| \) は「削除された列の絶対値和(deleted absolute column sum)」である。
さらに、これらの円盤のうち \( k \) 個の和集合が、残りの \( n - k \) 個の円盤と交わらない集合 \( G_k(A) \) を形成する場合、\( G_k(A) \) には行列 \( A \) の固有値がちょうど \( k \) 個(代数的重複度を含めて)存在する。
(演習)なぜ行列 \( A \) の固有値が \( G(A) \cap G(A^{T}) \) に含まれるかを説明せよ。また、3×3行列 \( A = [a_{ij}] \) で \( a_{ij} = i/j \) の場合を例に示せ。
このように、行列 \( A \) の固有値は、行に基づくゲルシュゴリン集合 \( G(A) \) および列に基づくゲルシュゴリン集合 \( G(A^{T}) \) の双方に含まれる。特に、これらの集合は \( A \) の最大の絶対値を持つ固有値(スペクトル半径)を必ず含む。
行に基づく集合 \( G(A) \) において、原点から最も遠い円盤上の点の絶対値は
|a_{ii}| + R_i(A) = \sum_{j=1}^{n} |a_{ij}|
である。したがって、これらの値の最大値は行列 \( A \) のスペクトル半径に対する上界を与える。同様の議論は、列方向の絶対値和に対しても成り立つ。
行列解析の総本山

コメント