目次
- 6.1.1 ゲルシュゴリン円盤定理:固有値の位置に関する基準
- 6.1.3 ゲルシュゴリンの定理の系:行列の固有値の存在領域
- 6.1.5 ゲルシュゴリンの定理によるスペクトル半径の上界
- 6.1.6 系:重み付き円盤による固有値の精密な位置推定
- 6.1.8 スペクトル半径と対角スケーリングに関する補題と練習問題
- 6.1.9 対角優位行列とLevy–Desplanquesの定理
- 6.1.10 厳密対角優位行列とその性質(Levy–Desplanquesの定理の拡張)
- 6.1.11 ゲルシュゴリン定理の拡張と非特異行列の条件(Vargaの結果
- 6.1 問題集
- 6.1 注記と参考文献
6.1 ゲルシュゴリン円盤定理
任意の行列 \(A \in M_n\) に対して、常に \(A = D + B\) と書くことができる。ここで、\(D = \mathrm{diag}(a_{11}, \ldots, a_{nn})\) は \(A\) の主対角成分を含む対角行列であり、\(B = A - D\) は主対角成分がすべて 0 の行列である。
ここで、行列 \(A_\epsilon = D + \epsilon B\) を定義すると、\(\epsilon = 0\) のとき \(A_0 = D\)、\(\epsilon = 1\) のとき \(A_1 = A\) となる。行列 \(A_0 = D\) の固有値は簡単に求められ、それらは複素平面上の点 \(a_{11}, a_{22}, \ldots, a_{nn}\) であり、それぞれの重複度を持つ。
\(\epsilon\) が十分に小さい場合、行列 \(A_\epsilon\) の固有値は各点 \(a_{11}, a_{22}, \ldots, a_{nn}\) の近傍に位置することが知られている。次に示すゲルシュゴリンの円盤定理は、この観察をより正確に定式化したものである。すなわち、各点 \(a_{ii}\) を中心とする、容易に計算できる円盤を考えると、これらの円盤の中に行列 \(A\) のすべての固有値が必ず含まれることを保証する。
行列解析の総本山

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