[行列解析5.6.35]定理:誘導行列ノルムとスペクトルノルムの関係

5.6.35

定理 5.6.35. \( \lVert \cdot \rVert \) を \( \mathbb{C}^n \) 上のノルムによって誘導された \( M_n \) 上の行列ノルムとする。このとき次が成り立つ。

(a) \( \lVert \cdot \rVert^{\#} \) はノルム \( \lVert \cdot \rVert_{D} \) によって誘導される。

(b) もし \( \lVert \cdot \rVert \) が自己随伴であり(かつ誘導されている)ならば、それはスペクトルノルムである。

証明. (a) (5.6.2(d)) を用いて次のように計算する。

\lVert A \rVert^{\#} = \lVert A^{*} \rVert \\
= \max_{\lVert x \rVert = \lVert y \rVert^{D} = 1} | y^{*} A^{*} x | \\
= \max_{\lVert x \rVert = \lVert y \rVert^{D} = 1} | x^{*} A y |\\
= \max_{\lVert y \rVert^{D} = 1} \max_{\lVert x \rVert = 1} | x^{*} A y |\\
= \max_{\lVert y \rVert^{D} = 1} \lVert Ay \rVert^{D}

(b) もし \( \lVert \cdot \rVert = \lVert \cdot \rVert^{\#} \) であれば、(a) より \( \lVert \cdot \rVert \) は \( \lVert \cdot \rVert \) および \( \lVert \cdot \rVert^D \) の両方により誘導される。補題 5.6.23 によれば、\( \lVert \cdot \rVert \) は \( \lVert \cdot \rVert^D \) のスカラー倍であり、さらに (5.4.17) によって \( \lVert \cdot \rVert = \lVert \cdot \rVert_2 \) であることが保証される。したがって、\( \lVert \cdot \rVert \) がユークリッドノルムによって誘導される以上、それはスペクトルノルムである。■

(5.4.18) で絶対ノルムと単調ノルムが導入されたが、それらが誘導する行列ノルムには有用な特徴づけが存在する。


行列解析の総本山

[行列解析]総本山
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました