[行列解析5.1.4]定理

5.1.4

定理 5.1.4(コーシー–シュワルツの不等式). 内積 \((\cdot , \cdot)\) が体 \(F\)(\(F = \mathbb{R}\) または \(\mathbb{C}\))上のベクトル空間 \(V\) に与えられているとする。このとき、任意の \(x, y \in V\) に対して次が成り立つ。

(5.1.5)
\lvert (x, y) \rvert^{2} \leq (x, x)(y, y)

等号が成立するのは、\(x\) と \(y\) が一次従属である場合、すなわち、ある \(\alpha \in F\) が存在して \(x = \alpha y\) または \(y = \alpha x\) となる場合に限る。

証明. \(x, y \in V\) をとる。もし \(x = y = 0\) ならば証明すべきことはないので、以下では \(y \neq 0\) と仮定する。次を定める:

v = (y, y)x - (x, y)y

このとき次が成り立つ:

0 \leq (v, v) 
= \big((y, y)x - (x, y)y,\; (y, y)x - (x, y)y \big)
= (y, y)^{2}(x, x) - (y, y)(x, y)(x, y) - (y, y)(x, y)(y, x) + (y, y)(x, y)(x, y)
= (y, y)^{2}(x, x) - (y, y)\lvert (x, y) \rvert^{2}
(5.1.6)
= (y, y)\Big( (x, x)(y, y) - \lvert (x, y) \rvert^{2} \Big)

\((y, y) \gt 0\) であるから、\((x, x)(y, y) \geq \lvert (x, y) \rvert^{2}\) が従う。等号成立は \((v, v) = 0\)、すなわち \(v = (y, y)x - (x, y)y = 0\) のときに限られる。これは \(x\) と \(y\) の非自明な一次結合である。したがって、不等式 (5.1.5) が確認され、等号成立は \(x\) と \(y\) が一次従属のときに限る。


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行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

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