5.1.2補題
補題 5.1.2. 実または複素ベクトル空間 \(V\) 上で、\( \lVert \cdot \rVert \) がベクトルの半ノルムであるならば、すべての \(x, y \in V\) に対して次が成り立つ:
\lvert \lVert x \rVert - \lVert y \rVert \rvert \leq \lVert x - y \rVert
証明. \(y = x + (y - x)\) と書けるので、三角不等式 (3) と斉次性の公理 (2) から次が従う:
\lVert y \rVert \leq \lVert x \rVert + \lVert y - x \rVert = \lVert x \rVert + \lVert x - y \rVert
したがって、
\lVert y \rVert - \lVert x \rVert \leq \lVert x - y \rVert
また、\(x = y + (x - y)\) とも書けるので、再び三角不等式 (3) を適用すると次が得られる:
\lVert x \rVert \leq \lVert y \rVert + \lVert x - y \rVert
したがって、
\lVert x \rVert - \lVert y \rVert \leq \lVert x - y \rVert
以上より、次が示された:
\pm (\lVert x \rVert - \lVert y \rVert) \leq \lVert x - y \rVert
これは補題の主張と同値である。 ■
\(\mathbb{R}^n\) や \(\mathbb{C}^n\) におけるユークリッド長に対応するのは、通常のユークリッド内積 \(y^{*}x\) である。この内積はベクトル \(y\) と \(x\) の「角度」に関係しており、もし \(y^{*}x = 0\) ならば \(x\) と \(y\) は直交しているという。以下では、ユークリッド内積の最も基本的な性質を取り出すことで、内積の公理を定式化する。
行列解析の総本山

[行列解析]総本山
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。
コメント