4.6.9
補題 4.6.9. \(A \in M_n\) が与えられているとする。このとき、\(A \overline{A} = I\) であることと、ある正則行列 \(S \in M_n\) が存在して
A = S \overline{S}^{-1}
が成り立つことは同値である。
証明. もし \(A = S \overline{S}^{-1}\) ならば、
A \overline{A} = S \overline{S}^{-1} \overline{S} S^{-1} = I
が成り立つ。逆に、\(A \overline{A} = I\) と仮定する。ここで
S_{\theta} = e^{i\theta} A + e^{-i\theta} I, \quad \theta \in \mathbb{R}
とおき、次を計算する:
A \overline{S_{\theta}} = A \left( e^{-i\theta} \overline{A} + e^{i\theta} I \right) = e^{-i\theta} A \overline{A} + e^{i\theta} A = e^{-i\theta} I + e^{i\theta} A = S_{\theta}.
ここで、\(-e^{2i\theta_0}\) が \(A\) の固有値ではないような \(\theta_0 \in [0, \pi)\) が存在する(除外される値は高々 \(n\) 個)。このとき \(S_{\theta_0}\) は正則であり、上の関係式より
A = S_{\theta_0} \overline{S_{\theta_0}}^{-1}
が成り立つ。■
これで、共対角化可能性(condiagonalizability)の必要十分条件を述べ、証明できる準備が整った。共対角化を実際に計算するアルゴリズムについては (4.6.P21) を参照されたい。これは (4.6.8(c)) の構成を一般化したものである。
行列解析の総本山

[行列解析]総本山
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。
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