[行列解析4.5.12]定理

4.5.12

定理 4.5.12

対称行列 \(A, B \in M_n\) に対して、ある正則行列 \(S \in M_n\) が存在して

A = SB S^{T}

が成り立つのは、必要十分条件として \(\mathrm{rank}\, A = \mathrm{rank}\, B\) が成り立つ場合である。

証明

もし \(A = SB S^{T}\) かつ \(S\) が正則ならば、\(\mathrm{rank}\, A = \mathrm{rank}\, B\) が成り立つ(0.4.6b)。逆に、(4.4.4c) を用いると

A = U_{1} \Sigma_{1} U_{1}^{T}
   = U_{1} I(\Sigma_{1}) D_{1}^{2} U_{1}^{T}
   = (U_{1}D_{1}) I(\Sigma_{1}) (U_{1}D_{1})^{T}

と書ける。ここで、慣性行列 \(I(\Sigma_{1})\) は \(A\) の階数のみによって決まり、\(U_{1}\) はユニタリ行列、\(\Sigma_{1} = \mathrm{diag}(\sigma_{1}, \sigma_{2}, \ldots, \sigma_{n})\) は \(\sigma_i \geq 0\) を満たす対角行列である。また、

D_{1} = \mathrm{diag}(d_{1}, d_{2}, \ldots, d_{n}), \quad
d_i = \begin{cases}
\sqrt{\sigma_i}, & \sigma_i \gt 0 \\
1, & \sigma_i = 0
\end{cases}

であり、\(D_{1}\) は正則である。同様に、行列 \(B\) についても

B = (U_{2}D_{2}) I(\Sigma_{2}) (U_{2}D_{2})^{T}

と表せる。ここでの定義も同様である。もし \(\mathrm{rank}\, A = \mathrm{rank}\, B\) ならば、\(I(\Sigma_{1}) = I(\Sigma_{2})\) が成り立ち、

I(\Sigma_{1}) = (U_{1}D_{1})^{-1} A (U_{1}D_{1})^{-T}
= I(\Sigma_{2}) = (U_{2}D_{2})^{-1} B (U_{2}D_{2})^{-T}

となる。したがって、

A = SB S^{T}, \quad S = (U_{1}D_{1})(U_{2}D_{2})^{-1}

が得られる。□

演習

対称行列 \(A, B \in M_n\) に対して、ある正則行列 \(X, Y \in M_n\) が存在して \(A = XBY\) が成り立つのは、ある正則行列 \(S \in M_n\) が存在して \(A = SB S^{T}\) が成り立つ場合と同値であることを示せ(ヒント:0.4.6c)。

この定理は、複素行列に対する \(T\) 合同に関するシルベスターの慣性法則(4.5.8)の類似物である。次の結果は (4.5.9) および (4.5.11) の類似物である。


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