[行列解析4.3.37]系(ポアンカレの分離定理)

4.3.37

系 4.3.37.

\(A \in M\_n\) をエルミート行列とし、\(1 \leq m \leq n\) とする。

さらに、\(u\_1, \ldots, u\_m \in \mathbb{C}^n\) を直交規格化されたベクトルとする。このとき

B\_m = [u\_i^{*}Au\_j]\_{i,j=1}^m \in M\_m

とおく。

ここで \(A\) と \(B\_m\) の固有値は (4.2.1) のように並べる。このとき次が成り立つ。

\lambda\_i(A) \leq \lambda\_i(B\_m) \leq \lambda\_{i+n-m}(A), \quad i = 1, \ldots, m \tag{4.3.38}

証明.

\(m \lt n\) の場合、追加の \(n-m\) 個のベクトル \(u\_{m+1}, \ldots, u\_n\) を選び、\(U = [u\_1 \ \cdots \ u\_n] \in M\_n\) がユニタリとなるようにする。

このとき \(U^{*}AU\) は \(A\) と同じ固有値を持ち、\(B\_m\) は \(U^{*}AU\) の主小行列であり、最後の \(n-m\) 行と列を削除して得られる。

従って主張は (4.3.28) から従う。

上の系に現れた行列 \(B\_m\) は \(B\_m = V^{*}AV\) と表される。

ただし \(V \in M\_{n,m}\) は直交規格化された列を持つ。このとき \(\operatorname{tr} B\_m = \lambda\_1(B\_m) + \cdots + \lambda\_m(B\_m)\) であるから、(4.3.38) の不等式を総和して \(V\) を適切に選ぶことで、(4.2.2) の一般化となる変分表現を得ることができる。


行列解析の総本山

[行列解析]
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました