4.1.8定理
定理 4.1.8.
与えられた行列 \(A \in Mn\) に対して、すべての非零ベクトル \(x \in C^n\) について \(x^* A x\) が実かつ正(それぞれ非負)であることと、\(A\) がエルミートであり、すべての固有値が正(それぞれ非負)であることは同値である。
証明. もし \(x^* A x\) が非零 \(x\) に対して実かつ正(それぞれ非負)なら、すべての \(x \in C^n\) に対して \(x^* A x\) は実であるため、(4.1.4(a)) により \(A\) はエルミートであることが保証される。さらに、\(u \in C^n\) が固有値 \(\lambda\) に対応する単位固有ベクトルであれば \(\lambda = u^* (\lambda u) = u^* A u\) が成り立ち、仮定より \(\lambda > 0\)(それぞれ \(\lambda \ge 0\))である。
逆に、もし \(A\) がエルミートであり、すべての固有値が正(それぞれ非負)ならば、(4.2.5) により \(A = U \Lambda U^*\) と表すことができる。
このときユニタリ行列 \(U = [u_1 \dots u_n]\) の列ベクトルは \(A\) の固有ベクトルであり、\(\Lambda = \mathrm{diag}(\lambda_1, \dots, \lambda_n)\) は正(それぞれ非負)の対角成分をもつ。
x^* A x = x^* U \Lambda U^* x = (U^* x)^* \Lambda (U^* x) = \sum_{k=1}^{n} \lambda_k |u_k^* x|^2
したがって、これは常に非負であり、すべての \(\lambda_k > 0\) かつ少なくとも一つの \(u_k^* x \neq 0\) の場合は正となる。
非零ベクトル \(x\) に対してこの条件は確実に成り立つ。
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