4.1.3
定理 4.1.3.
\(A \in M_n\) がエルミート行列であるとする。このとき:
(a) 任意の \(x \in \mathbb{C}^n\) に対して、\(x^* A x\) は実数である。
(b) \(A\) の固有値はすべて実数である。
(c) 任意の \(S \in M_n\) に対して、\(S^* A S\) はエルミート行列である。
証明. 次のように計算する:
(x^* A x)^* = x^* A^* x = x^* A x
したがって、\(x^* A x\) はその複素共役に等しく、よって実数である。(a) より、もし \(A x = \lambda x\) かつ \(x^* x = 1\) なら、
\lambda = \lambda x^* x = x^* (\lambda x) = x^* A x
は (a) により実数である。最後に、
(S^* A S)^* = S^* A^* S = S^* A S
したがって、\(S^* A S\) は常にエルミート行列である。
演習. 前述の定理における \(A \in M_n\) の各性質は、\(n = 1\) の場合にどのような意味を持つか考えよ。
実際、(4.1.3) の各性質はほぼエルミート行列の特徴づけとみなすことができる。
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