3.3.3系
\( A \in M_n \) が与えられたとき、\( A \) を消去する最小次数の一意なモニック多項式 \( q_A(t) \) を、\( A \) の最小多項式(minimal polynomial)と呼ぶ。
系 3.3.3.
相似な行列は同じ最小多項式をもつ。
証明.
\( A, B, S \in M_n \) で \( A = SBS^{-1} \) とすると、
q_B(A) = q_B(SBS^{-1}) = S q_B(B) S^{-1} = 0
となる。したがって \( q_B(t) \) は \( A \) を消去するモニック多項式であり、よって \( q_A(t) \) の次数は \( q_B(t) \) の次数以下である。しかし、\( B = S^{-1}AS \) なので、同様の議論から \( q_B(t) \) の次数も \( q_A(t) \) の次数以下であることがわかる。したがって \( q_A(t) \) と \( q_B(t) \) はともに \( A \) を消去する最小次数のモニック多項式であり、定理 (3.3.1) により両者は一致する。
練習問題.
\( A = J_2(0) \oplus J_2(0) \in M_4 \)、\( B = J_2(0) \oplus 0_2 \in M_4 \) を考えよ。\( A \) と \( B \) が同じ最小多項式をもつが、相似ではないことを説明せよ。
行列解析の総本山

[行列解析]総本山
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

 
  
  
  
  
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