3.2.9.2
観察 3.2.9.2. \( B = [b_{ij}] \in M_m \) が \( m - 1 \) 未満の非零の非対角成分を持つとする。このとき、置換行列 \( P \) が存在して、
P^T B P = B_1 \oplus B_2
となり、ここでそれぞれの \( B_i \in M_{n_i} \) であり、各 \( n_i \geq 1 \) である。
なぜこれが成り立つのかを説明する。以下は厳密化できる直感的な議論である。海の中に互いに近く位置する \( m \) 個の島 \( C_1, \ldots, C_m \) を考える。異なる島 \( C_i \) と \( C_j \) の間に、もし \( i \neq j \) かつ \( b_{ij} \neq 0 \) または \( b_{ji} \neq 0 \) であるなら、橋がかかっているとする。いま、\( C_1 \) から歩いて行けるすべての島を \( C_1, C_{j_2}, \ldots, C_{j_\nu} \) とする。
すべての島を連結するために必要な橋の最小本数は \( m - 1 \) 本である。ここでは橋が \( m - 1 \) 本未満であると仮定しているので、\( \nu \lt m \) となる。そこで、島を再ラベルして、\( C_1, C_{j_2}, \ldots, C_{j_\nu} \) に新しいラベル 1, 2, …, \( \nu \) を与える。このラベル付けに対応する置換行列を \( P \in M_m \) とする。すると、
P^T B P = B_1 \oplus B_2, \quad B_1 \in M_\nu
となる。この直和構造は、最初の(再ラベルされた)\( \nu \) 個の島と残りの \( m - \nu \) 個の島の間に橋が存在しないことを反映している。
与えられた \( B \in M_m \) が置換による相似の下で既約(分解不能)であるとは、置換行列 \( P \) が存在して、
P^T B P = B_1 \oplus B_2
となるような \( B_1, B_2 \) が存在しない場合をいう。ここで各 \( B_i \in M_{n_i} \)、かつ \( n_i \geq 1 \) である。このとき、(3.2.9.2) は「もし \( B \in M_m \) が置換相似に対して既約であるならば、少なくとも \( m - 1 \) 個の非零非対角成分を持つ」ことを述べている。
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