[行列解析0.9.3]三角行列

行列

0.9.3 三角行列

行列 \( T = [t_{ij}] \in \mathbb{M}_{n,m}(F) \) が、\( i > j \) のとき \( t_{ij} = 0 \) ならば 上三角行列 といいます。
また、\( i \ge j \) のとき \( t_{ij} = 0 \) であれば 厳密上三角行列 と呼びます。
これと同様に、転置行列が上三角(または厳密上三角)であれば、\( T \) は 下三角行列(または厳密下三角行列)と呼ばれます。
三角行列は上三角か下三角のどちらかであり、厳密三角行列は厳密上三角か厳密下三角のどちらかです。
また、対角成分がすべて1の三角行列を 単位三角行列 と呼びます。
なお、上三角行列を右三角行列、下三角行列を左三角行列と呼ぶこともあります。

\( T \in \mathbb{M}_{n,m}(F) \) が上三角の場合、
\( n \le m \) ならば \( T = [R \quad T_2] \)、
\( n \ge m \) ならば

T = \begin{bmatrix} R \\ 0 \end{bmatrix}

ここで、\( R \in \mathbb{M}_{\min\{n,m\}}(F) \) は上三角行列で、\( T_2 \) は任意の行列(\( n = m \) の場合は空行列)です。
下三角行列の場合は、
\( n \le m \) ならば \( T = [L \quad 0] \)、
\( n \ge m \) ならば

T = \begin{bmatrix} L \\ T_2 \end{bmatrix}

ここで、\( L \in \mathbb{M}_{\min\{n,m\}}(F) \) は下三角行列で、\( T_2 \) は任意の行列(\( n = m \) の場合は空行列)です。

正方三角行列は正方対角行列と同様に、その行列式は対角成分の積になります。
ただし、同じサイズの他の正方三角行列とは一般に可換とは限りません。
しかし、\( T \in \mathbb{M}_n \) が三角行列で対角成分がすべて異なり、かつ \( B \in \mathbb{M}_n \) と可換ならば、\( B \) も \( T \) と同じ種類の三角行列でなければなりません(2.4.5.1参照)。

\( i = 1, \ldots, n \) に対して、下三角行列 \( L \) による左からの掛け算(\( A \to LA \))は、
行列 \( A \in \mathbb{M}_n(F) \) の第 \( i \) 行を第1行から第 \( i \) 行までの線形結合に置き換えます。
有限回の第3種基本行変形(0.3.3)を行う結果は、\( L \) が単位下三角行列の形で表される行列 \( LA \) となります。
同様の主張は列操作および上三角行列による右からの掛け算にも成り立ちます。

三角行列のランクは主対角成分のゼロでない数以上ですが、それより大きくなることもあります。
正方三角行列が正則なら、その逆行列も同じ種類の三角行列です。
また、同じサイズ・種類の正方三角行列の積は同じ種類の三角行列となり、
その主対角成分は積の要素の主対角成分の積となります。


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