0.7.2 分割、ブロック行列、積の計算
集合 \( \{1, \ldots, m\} \) の分割を \( \alpha_1, \ldots, \alpha_t \)、
集合 \( \{1, \ldots, n\} \) の分割を \( \beta_1, \ldots, \beta_s \) とすると、
行列 \( A \in \mathbb{M}_{m,n}(F) \) は次の部分行列で分割されます:
A[\alpha_i, \beta_j],\quad 1 \leq i \leq t,\ 1 \leq j \leq s
\( A \in \mathbb{M}_{m,n}(F) \)、\( B \in \mathbb{M}_{n,p}(F) \) があり、
どちらの行列も中間の次元 \( n \) に対して同じ分割を持つ場合、
これらの分割は適合(conformal)していると言います。
このとき、行列積 \( AB \) の部分行列 \( (AB)[\alpha_i, \gamma_j] \) は次のように計算されます:
(AB)[\alpha_i, \gamma_j] =
\sum_{k=1}^{s} A[\alpha_i, \beta_k] B[\beta_k, \gamma_j]
右辺の各項は通常の行列積です。つまり、適合分割された行列の積は、通常の行列積を模倣する形になります。
同様に、サイズが等しく、かつ同じ行列の分割を持つ行列 \( A, B \in \mathbb{M}_{m,n}(F) \) に対して、和も次のように表せます:
(A + B)[\alpha_i, \beta_j] = A[\alpha_i, \beta_j] + B[\alpha_i, \beta_j]
行と列が順序分割されているとき、そのような行列をブロック行列(block matrix)と呼びます。
たとえば、\( A \in \mathbb{M}_n(F) \) の行と列が
\alpha_1 = \{1, \ldots, k\},\quad \alpha_2 = \{k+1, \ldots, n\}
で分割されているとすると、次のような 2×2 ブロック行列となります:
A =
\begin{bmatrix}
A[\alpha_1, \alpha_1] & A[\alpha_1, \alpha_2] \\
A[\alpha_2, \alpha_1] & A[\alpha_2, \alpha_2]
\end{bmatrix}
=
\begin{bmatrix}
A_{11} & A_{12} \\
A_{21} & A_{22}
\end{bmatrix}
このようなブロック行列による計算は、本書全体で頻繁に利用されます。特に、2×2のブロック行列が最も重要で有用です。
行列解析の総本山
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[行列解析]総本山
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。
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[行列解析9.0]主要な記号一覧
行列解析で使用している記号や用語の簡単な説明です。


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