[行列解析7.5.P21]

7.5.問題21

7.5.P21

\( n \ge 2 \)、\( A = [a_{ij}] \in M_n \) が半正定値であり、\( B = [e^{a_{ij}}] \) をそのアダマール指数行列とする。\( B \) は半正定値である。我々は \( B \) が正定値であることと \( A \) の行がすべて異なることが同値であると主張する。等価な主張として「\( B \) が特異であることは、\( A \) の二行が同一であることと同値である」と言える。

後者の条件の十分性は明らかであるので、\( B \) が特異であると仮定し、次の証明の概要に従って \( A \) の二行が同一であることを示す。

(a) \( B_t = [e^{t a_{ij}}] \) とする。問題 (7.5.P18) から \( B_t \) はすべての \( t > 0 \) に対して半正定値かつ特異であることが分かる。

\( D_t = \operatorname{diag}(e^{-t a_{11}/2}, \dots, e^{-t a_{nn}/2}) \) とすると、\( C_t = D_t B_t D_t = [e^{-t(a_{ii}+a_{jj}-2a_{ij})/2}] \) はすべての \( t > 0 \) で特異な相関行列である。

(b) 任意の \( i,j \in \{1, \dots, n\} \) に対して \( b_{ii}b_{jj} \ge |b_{ij}|^2 \) が成り立つことが知られている。

もしすべての異なる \( i,j \) に対して厳密不等式 \( b_{ii}b_{jj} > |b_{ij}|^2 \) が成り立てば、\( e^{a_{ii}+a_{jj}} > e^{2 \operatorname{Re} a_{ij}} \) となり、すべての異なる \( i,j \) で \( a_{ii}+a_{jj}-2\operatorname{Re} a_{ij} > 0 \) となる。

したがって \( t \to \infty \) のとき \( C_t \to I_n \) となり、十分大きな \( t \) に対して \( C_t \) は非特異となる。

この矛盾から、異なる \( p,q \in \{1, \dots, n\} \) が存在して \( b_{pp}b_{qq} = |b_{pq}|^2 \) が成り立つ、すなわち \( B \) の主部分行列

\begin{bmatrix}
b_{pp} & b_{pq} \\
b_{qp} & b_{qq}
\end{bmatrix}

が特異である。

(c) 問題 (7.5.P19) により \( a_{pp} = a_{qq} = a_{pq} \) が成り立ち、さらに問題 (7.5.P20) により \( A \) の p 行と q 行は同一である。


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