[行列解析7.4.6]両側回転問題

7.4.6 両側回転問題(Two-Sided Rotation Problem)

\( A, B \in M_{m,n} \) とする。ここでの問題は、あるユニタリ行列 \( U \in M_m \) および \( T \in M_n \) に対して、フロベニウスノルムの意味で \( A \) を「両側回転」\( UBT \) によってどの程度よく近似できるかというものである。

任意のユニタリ行列 \( U \) および \( T \) に対して、式 (7.4.1.3(a)) より次が成り立つ。

\|A - UBT\|_F^2 
\ge \sum_{i=1}^{q} \bigl(\sigma_i(A) - \sigma_i(UBT)\bigr)^2
= \sum_{i=1}^{q} \bigl(\sigma_i(A) - \sigma_i(B)\bigr)^2
\quad (7.4.6.1)

ここで、\( A = V_1 \Sigma_1 W_1^* \) を特異値分解とし、対角成分が \( \sigma_1(A) \ge \cdots \ge \sigma_q(A) \) であるとする。同様に、\( B = V_2 \Sigma_2 W_2^* \) を特異値分解とし、対角成分が \( \sigma_1(B) \ge \cdots \ge \sigma_q(B) \) であるとする。

このとき、 \( U_0 = V_1 V_2^* \) および \( T_0 = W_2 W_1^* \) と定義する。

すると次が成り立つ。

\|A - U_0 B T_0\|_F^2
= \|V_1 \Sigma_1 W_1^* - V_1 \Sigma_2 W_1^*\|_F^2
= \|\Sigma_1 - \Sigma_2\|_F^2
= \sum_{i=1}^{m} \bigl(\sigma_i(A) - \sigma_i(B)\bigr)^2

したがって、\( U_0 B T_0 \) は式 (7.4.6.1) の下限を達成し、\( A \) に対する最良の最小二乗近似である。


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