[行列解析7.4.10.1]定理:ユニタリ不変ノルムが行列ノルムとなる条件

7.4.10.1定理:ユニタリ不変ノルムが行列ノルムとなる条件

ユニタリ不変ノルム \( \| \cdot \| \) が \( M_n \) 上の行列ノルムであるための必要十分条件は、すべての \( A \in M_n \) に対して

\|A\| \ge \sigma_1(A)

が成り立つことである。

証明

すべての \( X \in M_n \) に対して \( \|X\| \ge \sigma_1(X) \) が成り立つと仮定する。\( A, B \in M_n \) に対して、次を示す必要がある:

\|AB\| \le \|A\|\,\|B\|

ここで、\( \| \cdot \| \) によって定められる対称ゲージ関数を \( g \) とする。以下の計算では、(7.4.7) の記法を用い、\( g \) が単調ノルムであること、ならびに特異値の不等式 \( \sigma_k(AB) \le \sigma_1(A)\sigma_k(B) \) を用いる(この不等式は (7.3.11) の前の演習を参照)。

\begin{aligned}
\|AB\| &= g(s(AB)) = g([\sigma_1(AB)\ \sigma_2(AB)\ \ldots\ \sigma_n(AB)]^T) \\
&\le g([\sigma_1(A)\sigma_1(B)\ \sigma_1(A)\sigma_2(B)\ \ldots\ \sigma_1(A)\sigma_n(B)]^T) \\
&= \sigma_1(A)\, g([\sigma_1(B)\ \sigma_2(B)\ \ldots\ \sigma_n(B)]^T) \\
&= \sigma_1(A)\, g(s(B)) = \sigma_1(A)\, \|B\| \\
&\le \|A\|\, \|B\|
\end{aligned}

したがって、定理は成り立つ。

この定理から、Ky Fan の \( k \)-ノルムおよび \( p \ge 1 \) に対する Schatten の \( p \)-ノルムは、いずれも \( M_n \) 上のユニタリ不変行列ノルムであることがわかる。

ただし、行列ノルムの凸結合が必ずしも行列ノルムになるとは限らない((5.6.P9) を参照)。しかし、ユニタリ不変行列ノルムの凸結合は、常にユニタリ不変行列ノルムとなる。


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